1603年に五街道の起点として最初の日本橋が、浮世絵にもよく登場する木製の太鼓橋として建設されてから420年が経過し、交通の要衝であり続け、多くの人々が行き交う場所だったのですが、今もその役割は変わるどころか、新たな発展のとば口にあると言えます。日本橋界隈は、江戸時代から金座を中心にした金融センターであり、現在も石造りの日本銀行が日本だけでなく、アジアのファイナンシャルセンター的役割を担っています。
江戸の初期に創業した三井越後屋が三越となっても日本橋に存在し、高島屋とともにファッションと文化の先進地であり、広範な年齢層の人々が行き交う場所であり続けており、バブル後の低迷を脱却し隆盛を極めつつあります。日本橋界隈は、日本画、浮世絵、西洋画、磁器などを扱う美術商が軒を並べる街でもあります。とはいえ、この界隈を闊歩する人々にとって、通い慣れた方々は別にして、画廊や画商のお店の敷居は、時に高く感じられるのではないでしょうか?
その美術文化の街に音楽を持ち込んだらどんな化学反応が起きるだろうかという好奇心が、日本橋の画廊でジャズ(サクソフォーンを中心に10種類の木管楽器)とクラシック(バイオリン)を融合させたデュオMINGLEのライブを企画した動機です。
日本橋は華やかな江戸、東京を象徴する橋ですが、1911年に現在の石造りの橋に生まれ変わってからだけでも、関東大震災、東京大空襲(焼夷弾の跡が残っている)、太平洋戦争の戦後復興を世界に宣言する東京オリンピックを開催するために建設された首都高速の橋によって空を仰ぎ見ることが叶わなくなりと、艱難辛苦を味わってもいます。この橋に鎮座する「麒麟」は、何をどう見てきたのか。それに思いを馳せて、このライブを「麒麟の自画像
- A Portrait of the Kirin-」と名付けました。
このライブのために現代リアリズム絵画で飛躍著しい若手画家、石田淳一氏にキリン像の絵をお願いし、このサイトに使用させていただいています。